2014年7月29日火曜日

函館 蔦屋書店

北海道に行った際に函館蔦屋書店に立ち寄ってみた。
往路は青森から車で上陸していたのでカーナビに住所を入れて直行。国道5号線函館新道沿いに広い敷地にありました。多車線&側道があるので説明が必要じゃないかと思うのですが、そういう配慮が公式サイトにないのはある種の潔さでしょうか。(Googleマップじゃこういう道の入り方は分からないですよ)
※復路も函館から青森へとフェリー移動だったので時間調整兼ねて立ち寄ってます。


スケール感が分かりにくいですが2階建てです。

建物サイドにも駐車場がありますが、基本玄関がある手前側駐車がデフォルト。

スターバックス、ファミリーマートなども出店

1. 店舗構成
基本コンセプトは代官山の拡大版ですが、書店部門は総合書店指向となっています。
1Fには書店の他にスターバックス、ファミリーマート、ソフトバンク等が、2Fには書店の他にレンタルコーナーやレストランが入ってます。
吹き抜けデザインが採用されており1Fから2Fまで届く本棚も置かれているのですが、使われているのは下層段のみ。インテリアとしてみせる為の本棚という代官山でも多用されているコンセプトは函館でも採用されている訳ですが、あまりに高すぎて何も入っていない棚が目立つのは建築当初の構想通りか気になる所です。

2. 本棚配置・分類方法
本棚配置はロ型レイアウトを多用。外周はマガジンストリートに割り当てられている部分と通常の本棚としての利用に別れています。中段の棚が突出しており本棚に寄って立っていると下段の背表紙が見えないのは代官山、武雄市と変わらず。ただ店舗面積が広く通路が広いのでこちらではあまり気にならないでしょう。
「本の森」と呼ばれるコーナーがあり、こちらは普通の本棚配置されているのは、代官山と大きく異なる点ですね。著者別混在ではく版元別著者あいうえお順という極めて標準的な配架が為されていて、このエリアの使い勝手はまずまず。

ちょうど直木賞・芥川賞の選考日が近かったので、直木賞の候補作コーナーが設けられていないか探して見ましたが、平台には設けられておらず「本の森」の「旬文学」棚に候補となった作家の書籍が一部集められていたように見えました。
地方の書店は何軒かこの視点で見て回りましたが両賞発表後も受賞作が平台にある事はあっても特にPOPは立てられてない状況は見てましたので、こんな所かと思うのですが「旬文学」という分類の立て方には驚愕。平台に置かない代わりに話題の本、著者の本棚を固めたという事なんでしょうけど、普通の分類にしてもらった方が探しやすいのは確か。

書籍の陳列方法で引っかかるのは、普通の本棚を使って表紙が見えるように配架する手法を多用している点でしょう。平台が以外に少ない為だと思いますが、表紙が見えるように配架して推している手法が非常に多い。そして表紙が傷むのが見ていられない。
あと本棚をこのような形で使うと本の収容能力が下がります。少なくとも種類は減ります。こういう配架を多用する背景には本棚の維持管理に対するマンパワーについて問題があるのではないかと思ってみてしまいますが、実際の所はどうなんでしょうね?

3. 実際に本を探してみた
(1)「我輩ハ猫ニナル」(芥川賞候補作)
7月の新刊「我輩ハ猫ニナル」は旬文学の棚で見つからず、iPad端末を叩くとやはり旬文学で在庫有。書店員さんを捕まえて聞いてみると探してきてくれたのですが、旬文学棚にあったとの事で少々申し訳なかった。
このiPad端末ですが検索対象がデフォルトで映像レンタルになっているのは少々閉口。販売書籍(だったと思う)にいちいち切り替えて検索は勘弁して欲しかった。UIは代官山/武雄市と異なり函館専用に見えたのですが、どういうシステム開発体制なのか気になるところ。

(2)「エドノミクス~歴史と時代劇で今を知る」(2014年5月刊行)
どこにあるか見当がつかず、iPad端末を叩いてみたら在庫はあるとの表示。歴史コーナーだったと思いますが、そちらの棚に見に行っても見つからず。ということで再び書店員さんに捜索依頼。「2Fの別コーナーに誤ってささっているかもしれない」という話だったので具体的にどこか聞いたら「探してきます」
結局、2Fにも無かったとの事で客が既に本棚から抜いて持っている可能性が考えられるとの説明で断念。

(3)柴崎友香さんの著作(文庫)
芥川賞受賞されたので試みに端末を叩いて在庫状況を見てから「本の森」を探索。欠けているものはありましたが、そこそこ見つけられたので悪くない在庫状況だと思います。

(4)歴史/日本史年代軸のシュールな配架
「マルヌの会戦」「第一次世界大戦の終焉」中央公論新社から出ている第一次世界大戦のノンフィクション。仏では古典的な評価があるようですが初めて訳されたというのは第一次世界大戦開戦100周年のおかげでしょう。「第一次世界大戦の終焉」は2014年5月に出ているのですが飛び込みで入ってみた紀伊國屋書店でも在庫が見つけられなかったという本です。

「マルヌの会戦」は歴史/日露戦争前後の時代だったか、そういう分類の中に入れられてます。こちらの歴史コーナー、世界史カテゴリーは総合的なものに絞っていて特定の年代の本は日本史の時代軸で分けて配架されています。(!)
普通の書店だと西欧、東欧もしくは国別で分けている所ですが、日本史の時代に合わせてるのかというの合理性が全く見出せず呆然。
結局、今の日本の歴史書の刊行がかなり日本史に偏っていて他の国の歴史書があまり出なくなっている事の反映なのだろうとは思います。ただ、日本史に興味があって見ている人にすれば、他の国の本が入っていても探しにくいだけですし、その逆もまた真だと思うのですが。。。

なお「第一次世界大戦の終焉」を蔦屋書店の端末で検索する際は「だい1じ」で入れる必要があります。「だいいちじ」ではヒットしないので注意。(こちらで登録されている本が2、3冊あるのは直して欲しい所。)

4. 繁盛するスターバックス
武雄市は私が行っている際は何故かスタバはガラガラなんですが、他の蔦屋書店だと盛況な所が多いですね。その中でも函館は朝でも夜でも、いつでも何人か並んでいてフル回転していて、函館蔦屋書店で一番受け入れられたコーナーのように思えます。
回り見ていると本を買って読んでいる人より勉強している大学生が多い印象で、やはりスターバックスがある場所という方が先にあるんじゃないかという気がします。

5. 最後に ー 書店としての機能性
何冊か本を探して見て思ったのですが、色々な本を手に取ってみて探すという役割がきちんと機能しているのは「本の森」だけじゃないかという気がします。
iPad端末で探していけばいいという人がいらっしゃるとは思うのですが、表紙や背表紙を見て手に取って選ぶというのは、行き来のしやすさが大事です。
函館蔦屋書店はこの点では厳しいものを感じます。ビルのフロアをいくつか占有して100万冊超の書籍/雑誌を扱う書店は見た目は普通ですが、本を見て回るという観点での気持ち良さは函館蔦屋書店では感じられません。分類の規則性や本棚配置の問題が大きく絡む所で、あれだけの面積でもし整然と本棚が並ぶレイアウトであったなら書店の本棚探索する者としては実に利便性が高くて有難い存在になる事でしょう。こういう発想に蔦屋書店の大型店舗構想が転換されて行くと良いのですが。。。