2014年7月9日水曜日

長崎市立図書館のリファレンスサービスを利用してみた

筆者の母は長崎市出身。祖母も筆者が物心ついた時には既に関東に住むようになっていて親戚筋はいない。
その母も昨年亡くなり色々な書類手続きをしていた所、母の生まれた時の住所が分かったので長崎に行ってその場所を見てみようと思い立ち、2014年の5月の連休に長崎へ向かった。


1. 長崎市立図書館から長崎県立歴史文化博物館へと巡った経緯
行ってみて分かったのは、戸籍に記録されていた住所の番地表記が今の住所表記と全く異なっているという事。これは参った。
Googleで検索掛けても当時の住所区分の資料が分からない。どうしたものかと考えていたのですが、長崎市立図書館なら資料があるのでは?と思い立ち行ってみました。

長崎市立図書館は新興善小学校跡地に建てられた新築されたもので2008年に開館。ガラス張りのビルで1Fには救護所メモリアルが併設されている。(新興善小学校は昭和20年の原爆投下直後、救護所が置かれていた。)

郷土史や自治体史のコーナーで資料を当たってみたのですが、該当するものがなかった為、リファレンスサービスのカウンターで昭和21年のある町の番地について分かる資料がないか質問。
古地図についてどの図書館、博物館が収蔵しているかは予めリファレンスサービス担当者向けQ&A集で判明しているようなのですが、長崎市立図書館ではどこまで遡れるか調べて頂けたのですが残念ながら市立図書館としては該当する資料は収蔵していないとの事で、長崎県立歴史文化博物館で昭和25年の商工明細市街地図を収蔵していて、これが一番近いのではないかと教えて頂けた。所要時間は10〜20分程度。

すぐ長崎県立歴史文化博物館へ移動。リファレンスルームへ。ここでは研究者などに博物館収蔵資料の閲覧とコピーまたは写真撮影の許諾事務を対応されている。博物館にこのようなサービスがあるのは知っていましたが、利用者になるのは初めて。
カウンターの方に事情を説明して問題の市街地図を見せて頂いたのですが、この地図は企業や店舗の情報を地図で分かるようにしたもので、番地割り出せるのかと呆然。
ただよく見ると企業や店舗の広告が升目に入っていて、そこに住所が載っていて母の当時の実家の所在地を割り出す事が出来た。

2.リファレンスサービスの威力
筆者自身は就職してから図書館を使う機会が少なかったのですが(郷土史の確認で十数年ぶりに神戸の地元図書館に行った事ぐらいか)、今回リファレンスサービスを利用してみて、その威力を実感した。
Googleがクロールしているデジタル化情報なら自分である程度見つけるスキルはあると自負しているが、図書館の収蔵資料についてどのような情報なら提供できるか回答するというのは大変高度な専門家でないと出来ない事だと思う。
Googleと図書館のリファレンスサービスを比較してGoogleがあるから図書館のリファレンスサービスの意義が薄れているという論を見かける事がありますが、そのような言説を主張される方が図書館のリファレンスサービスを利用した事があるのか疑問を感じる。
結局インターネットの検索はデジタル化されていて、なおかつ検索サービスのクロールを受けている事が前提。そしてそのインターネットの検索は広告をクリックさせる為に検索条件が微妙に変更されている。(昔ならAND検索が既定だったが、現在はOR検索が既定になっていて、検索キーワードのヒット数順でリストアップされるようになっている。検索結果件数は増えるが、これはノイズになる可能性が高い一部キーワードしか含まれない検索結果も含まれる事を意味する。なおGoogleの場合、検索ツール→「全ての結果」を「完全一致」に変更する事でAND検索のみに変更は出来るが既定には出来ない)

図書館のリファレンスサービスは利用者が求めている情報について図書館で収集している資料を紹介する事を目的としている。図書館に収蔵されているデジタル化されていない資料について探すという行為は、この図書館なら資料を収蔵しているという当たりを付けられているが、どこにあるか分からない場合に最短で「正解」に辿り着く手段になる。

書籍のデジタル化は国会図書館での取り組みが知られているが、著作権法の関係でGoogleで検索したり自宅等から閲覧する事は出来ず、国会図書館または国会図書館の専用閲覧端末を持つ図書館からしかアクセスできない。
法改正されて書籍デジタル化とインターネットでのアクセスが出来るようになったとして、問題のデジタル化がそんなにすぐ進むだろうか?書籍は年間数万点刊行されている状況であり、現在新刊されている書籍が全て電子書籍併売になっている訳ではない。
このような状況が全てデジタル化、インターネット経由での検索・閲覧が自由に出来るようになるのは、10年先でも難しいように思える。

図書館のあり方、リファレンスサービスのあり方はコンピュータやネットワークの影響で徐々に変わるとは思うのですが、それが数年というタイムスパンで変化するとは思えない。そのような状況を踏まえず「リファレンスサービスなどなくてもインターネットの検索サービスがあるから問題ない」という言説は現実を見ていないと思う。