この件については武雄市図書館、海老名市立図書館と比較すると大/中/小の3区分でコード管理されている事のみ共通でコード内容は異なっており統一された規格ではありません。
また2015年12月末に武雄市図書館の企画展を見学しましたが、ここではNDCについて説明を加えた上でジャンル(ライフスタイル分類の事)別の排架を行っているとの解説をされています。
CCCにおけるライフスタイル分類についてどのような認識で作られたのか、その実態が図書館の分類コードを比較出来るようなものなのか検討を行ってみた。
武雄市図書館、同館併設蔦屋書店の排架分類
武雄市図書館の場合、検索結果をレシートに出力すると書誌情報の他に
棚番(書架ごとに6桁の番号が割り振られている。規則性は不明)
場所コード(「デザイン・アート/歴史/その他」等)
棚の名称(「(G41)デザイン・アート」)
館内レイアウト図
が印刷されます。この内容からすると棚番マスターを引くと場所コード(=ライフスタイル分類そのものに見える)、棚の名称、館内レイアウト図上の位置を取得出来るようになっているのではないかと推測されます。
武雄市図書館 蔦屋書店ではどうなっているか。検索結果レシートを見てみましたが、基本的に武雄市図書館のレシートと同じ体系で記載されています。
NDCと企業の商品管理用分類コードの類似点
図書館の分類コードは、書誌情報として記載するもの(検索で使用)と排架で使用するものに分けて考えられます。
NDCはまず書誌情報の一つとして登録しておき検索に利用する事が想定されます。
企業の販売管理システムで言えば商品マスターの商品分類コードのように自社取り扱いアイテムを全て分類して検索や集計に活用する為のものなので、少なくとも自社内では統一されていなければなりません。店舗や部署毎で個別に分類コードを持つという事は考えられない事です。
NDCは日本図書館協会で改版作業が行われており統一されたコード体系として書誌管理出来る事を利用して図書館の排架にも用いる図書館も多く見られますが、このようにする事で幅広く資料を収集して提供する図書館において高い検索性を実現していると言えるでしょう。
書誌分類ではなく書架分類に見えるライフスタイル分類
では、CCCがいうライフスタイル分類はどういうものなのか。
武雄市図書館、武雄市図書館 蔦屋書店の検索結果レシートを見る限り、書誌分類ではなく排架分類、書架分類コードでしかありません。NDCのような統一されたコード体系は持っておらず、図書館/書店レイアウトと見出しプレートに合わせて個店/個館別でマスターを作成して運用されているように見えます。
この事を考えるとライフスタイル分類は書誌分類用のコード体系ではなく、個店/個館で書架配置を管理する為の手法に過ぎないと言って良いと思います。
※武雄市図書館と海老名市立中央図書館のライフスタイル分類コードは実際に別々のものになっています。
ライフスタイル分類の優位性とは
「結局、この武雄市図書館では蔵書の管理にあたって従来の十進分類法をやめ、より生活の実感に即した22種の分類を採用することにした。例えばこどものファッションを扱った本はファッションの棚に収めるべきなのか、あるいは育児書か。美しい庭の写真だけを集めた写真集はアートの棚なのか、ガーデニングの棚なのか……。内容にのみ即するのではなく、その本がどういう読者に向けて作られたのかをきめ細かく読み取って分類して行く方法で、「代官山 蔦屋書店」を創る際にCCCが独自に編み出したものだ。」(増田宗昭著「知的資本論」より引用)「知的資本論」でのNDC批判とライフスタイル分類の優位性主張されている部分を抜粋してみましたが、増田氏の発想が商品マスター的なものではなく、書架レイアウトと密接に結びついた形で考えられている事がよく分かる部分となっています。そもそもNDCを引き合いに批判する必要はなく、単に排架方法に書店的な考え方を導入したという事で理解すれば、概ね納得は出来ます。ただCCCが図書館指定管理者事業を広げるに際していちいち個館単位でライフスタイル分類を創る事は多大な負担になっているであろう事は容易に予想出来ます。
またこれが一番課題だと思うのですが、武雄市図書館の無理矢理な改装によって複雑怪奇な書架配置を産み出しており、創意工夫されたというライフスタイル排架が5回行って5回とも探しやすい様には思えた事がないという所が一番問題だろうと思います。