2015年12月4日金曜日

小説が読まれなくなっている?2 :文庫本を忘れてあげないでください

何故新刊小説を買わないのかという命題を書かれている方がいた。
オリコンの年間ベストセラーリストは推定部数を載せていて興味深い。新刊小説(単行本)は「火花」を除いて30万部に届いていない。
http://www.oricon.co.jp/special/48458/13/

但し文庫本は話が別でこちらは80万部に達している作品もある。
http://www.oricon.co.jp/special/48458/8/

単行本は売れていないけど文庫本だと売れる。この現状無視した議論が多いように思える。

昨今の出版社、著者の一部の主張は文庫本がなければその通りだろうと思う。ただ現実には文庫本が存在していて、単行本よりも書き下ろし短編など追加されていて内容が新しいなんて事も良くあるわけでよほど好きでないと単行本で手を出すのは馬鹿馬鹿しい行為だと考える人がいてもおかしくない。

出版社がこの事を何も考えてないと主張する向きがありますが、そんな事はなく例えば東野圭吾氏の書き下ろし新作を文庫で出すというのは一つの解だと思うし、また早川書房がルメートル新作で単行本5,000部と文庫版35,000部を同時発売して文庫版は増刷になったとの話を聞くとちゃんと考えて動いている出版社はある。(ちなみに東京都内図書館では単行本と文庫版両方、愛知県内は単行本のみ所蔵の自治体が多かった。)

何故買わない人は買わないのかという設問を考える際に何故図書館の影響だけ論じて新古書店の事を考えないのか?というのは最近のこの問題議論の不可解な傾向の一つ。家具店で専用本棚のラインアップは乏しく汎用棚と一緒にされている。そもそも家に本棚を置く余裕がないとすれば、本を買う人でも読んで手元に置いておきたくなくなれば新古書店に売りに行く。そして新古書店で買う人もいる。

図書館の貸出ランキングはその年の新刊冊数は案外わずかです。2〜3年前のベストセラー本が多くを占めている事が多い。予約本だと今年の新刊が多いですが、すぐには追加購入されないので予約数が増える事で予約ランキングでは上位に入るという図式なのでしょう。

「下町ロケット」文庫版が100万部販売を記録したのは2013年12月発売から2015年11月23日の週間セールスで達成とほぼ2年間要しています。こちらの場合、テレビドラマ化がいい影響与えたのだと思います。
このように短期間で爆発的に売れるような時代ではない時にある程度時間をかけて販売して読者の感想の輪が広がっていく時に店頭できちんと手を取ってもらえるようにするにはどうすればいいのかという取り組みが必要だと思いますが、新刊小説が売れないとの批判はこのような取り組みの必要性を無視して刊行したらすぐ果実を収穫されたがっているように見えて仕方がありません。

まずは単行本と文庫版の価格設定の見直しからされるべきでは?と思いますが。翻訳小説や翻訳ノンフィクション読みやっていると文庫版が都合良く出たりしませんので単行本よく買ってますし、文庫版出ても1,000円以上するようになってきているのでそんなに損した気分はないのでよく単行本で買ってます。

単行本を買った読者裏切って売らんかなの安い値付けして書き下ろしまでつけたりして読者に文庫版待てばいいと思わせてきた出版社こそ反省すべきではないでしょうか。でないと単行本で小説が売れるわけないですよ。