前回レポートでは2013年12月、2014年5月訪問時に調べた事、感想をまとめていますので、良ければ先にこちらをご覧下さい。
県外の方と思しき人たちが記念に撮影している所を見かけた。
「建築設計資料97図書館3」(建築資料研究社)に
改装前の写真が載っていますがこのような銘版は見当たらない。
※そもそも正式名称は武雄市図書館・歴史資料館なので誤り。
1. 武雄市歴史資料館
武雄鍋島家洋学資料が国の重要文化財指定を受けた記念の企画展示が行われた為、旅行日程を一部変更して再訪しました。
歴史資料館の常設展示は武雄市図書館の指定管理導入以前にはあったのですが、指定管理導入時にTSUTAYAレンタルコーナーに改装された為、企画展示されるか他の博物館の企画展示で出展される機会でないと見る事が出来なくなっていました。
企画展では鉄道パネル展示など武雄と関係ないものが多く、武雄蘭学の歴史を知るにつれ、いずれ見てみたいと思っていたのですが、国の重文指定記念の企画展示でようやく見る事が出来ました。
- 今回の展示は企画展示室で行われました。他の企画展示では入った事があるのですが決して広くはありません。隣のメディアホールが広いのでそちらで何故やらないのかなと思ったのですが、この企画展示室、壁際は通常単なる壁にしか見えませんがシャッターになっていたようで引き上げられると展示用ガラスケースが埋め込まれているという設計。
確かに今回の展示品は古い蘭学書籍や設計図などの古文書が多く含まれており、このようなケースでの展示は必要だと分かりますので部屋の選択は納得。
ただ、以前の常設展示室があればこんな対応自体不要であったのではないかという事は指摘したい。 - 展示品は江戸時代に入って来たオランダなどの洋書や大砲の設計図と鍋島家の屋敷から発掘されたという臼砲、大砲など3門を間近に見られたのは眼福でした。
オランダ陸軍の軍装と装備に関する本は極彩色でナポレオン戦争の頃の陸軍からまださしてかわっていない事が分かるもので他のページも見たかった。
2. 武雄市図書館
(1)書店・レンタル編
- エントランスの書店文庫本棚の前に文具コーナーが出来ていた。書店が売上利益不足に悩むと本業の書籍・雑誌販売から文房具販売やレンタルに走る傾向がありますが、2年目でもうその道を取ったのかというのが正直な感想です。
そもそも書店販売用の書籍在庫数は1万冊という数字が言及されています。また2014年5月時点での書店棚カウントでは多くて2万5千冊程度と見ていました。
書店は一般に1坪500冊〜1000冊程度の在庫を持っています。この数字から言えば蔦屋書店武雄市図書館店の店舗面積は10〜20坪程度に過ぎません。この面積規模は書店としては小規模なもので、そのような「書店」が文房具を置くというのは書店機能の弱体化を意味します。 - また書店文庫棚は上段2列が面陳列に変更されていました。当たり前の話ですが本棚で背表紙を見える形で入れる場合に比べて面陳列は入る種類数は減ります。また棚一杯に本を入れられてなければ、確実に冊数も減ります。返本して空けて面陳列用に転換した可能性が高いと思います。(書店は委託販売しているだけなので返本すれば返金を受けられます。在庫書籍=金銭と同じなので、その分コストは掛かりますので減らすという選択は経営上はありえる事です)
- 本棚で1冊だけ面陳列しているものが以前からよく見られたのですが、単行本だと本棚に立てかけて本をいためる現象がよく見られたように記憶していたのですが、この問題は改善されたようで本を面陳列する為のスタンドが使われていた。
但し高所棚面陳列の場合だと以前通りスタンドを使わない立てかけ式が残っていたのは大変残念。 - 自治体通販コーナーは一頃専用でレンタルコーナーの隣のスペースに棚が組まれていましたが、その棚は撤去されて2013年12月に見かけた口型書架に戻っていた。ブランド名が変わり、運営会社が一部上場企業関連会社から独立して出来たスタートアップ企業に変更になった事が影響しているのだろうか。
- 以前から置かれていたか記憶が定かでありませんが、武雄市図書館トートバックが並べられていたのが微笑ましい。
- レンタルコーナーは、今回を含めて3回訪問で一度も客が入っているのを見た事がありません。必要なんでしょうか。前述の武雄鍋島家の洋学資料の常設展示コーナーに戻されれば、教育と観光に寄与すると思います。
(2)スターバックスと利用者の座席ゾーニング問題
- スターバックス席は混雑。但し空きはない訳ではない。皆さんスタバのコーヒー等片手に読書、歓談、PC操作されていた。
一方で1階奥や2階などの座席は満員状態。こちらは大学生らしき姿が多い印象でPCでレポート作成や高校生は参考書を開いて勉強していた。 - 図書館での座席のあり方については一般的には読書と学習利用で分けてゾーニングする。武雄市図書館ではスタバでドリンク類を買った人と買わなかった人で分けられているとしか言いようがない状況がある。
- 「図書館たより」で飲食禁止のはずのエリアでお菓子を食べた痕跡が見つかったので特定の場所以外で食べないようにとの注意喚起があった。この特定の場所はスターバックス席の事のはずですが、そのスターバックス席での飲食はスターバックスで買う事が求められる訳で整合性が取れていない。
- スターバックス席では書店在庫でも図書館本でも自由に読んでいいとされているが、棚に戻すのは読んでいる利用者に任せられている。三省堂書店でもカフェ併設が行われているが同書店では本は専用のカートに戻すように求めている。本の汚損チェックしてから棚に戻す措置をとっているためで、もし汚損した場合は買い取りを求めたりはしてないので申し出てほしいとの注意書きもされていたと記憶。
- カフェ併設書店での汚損や傷みとその返本が誰の負担になるのか。厳密に言えば出版社という事になる。この点は出版社側が宣伝になるとして容認出来るレベルかどうかに尽きると思います。この問題は一旦置いておくとして、本の状態をチェックする体制をとって実際に買うお客様が傷んだ本を手にする事がないように配慮している書店と配慮していない書店のどちらが正しいのかと考えれば、配慮している書店の方が正しいと思う。そこまでやらない書店や図書館でカフェ併設が妥当か疑問です。
(3)図書館
- 「エポカル武雄たより」の発行や図書館活動としてのこども司書活動のパネル展示など図書館らしい取り組みがみられたのは良かった。
- 新着図書コーナーは分類別で書架3列が割り当てられていた。1列217冊で10月〜12月新着図書が主に並べられていたのですが、平均単価1500円、1ヶ月200冊で貸出分があるとして1.5倍の300冊を購入しているとすると年間540万円程度にしかならない。新着図書の書架に入らずに高所書架に直行する新聞縮刷版のようなものもあるので断定は出来ない。この点の検証についてはまた考えてみたい。
- 口型書架の高い所には相変わらずダミーの背表紙本が入っている棚が見られた。本を探す際にみなくてもいい部分を見て確認しなければならずノイズでしかないので撤去してほしい。
- 「高い所の本を見たい場合は図書館員に申し出て下さい」との張り紙を見たように記憶。それ以前に特に高い棚に入っている本は背表紙が読めないのでオペラグラスか双眼鏡を置いてほしい……というのは冗談ですが、本を見て探すという利用者にとっては武雄市図書館の致命的問題の一つだと思う。図書館員/書店員の人たちが忙しく駆け回られていてどこで声をかければいいか分からないという問題もありますから。
2014年12月29日の武雄市図書館・歴史資料館
この写真の撮影は12時前。年末休みに入っている為か駐車場は9割ほど入っている状態。
折しも2015年1月11日投開票の佐賀県知事選の真っ最中。
図書館・歴史資料館前にも選挙ポスター掲示板No.4が設置されていた。