海野弘「食糧も大丈夫也」(農林統計出版)という2016年4月に出た本がある。税別5,500円となっていて少部数の刊行物である事が予想される。太平洋戦争時の食糧政策について調べられた労作。著者は農水省官僚だった方で資料で解き明かせる範囲で国民向けの食糧政策と現実について追っている。50万冊程度の在庫を持つ書店だと新刊委託で配本されたようで筆者も丸善岐阜店の店頭で見つけて買っている。
この本の公立図書館と大学図書館の収蔵状況について調べてみた。
(調査方法)
12月5日にカリールローカル、CiNiiの大学図書館横断検索で検索した結果による。
(結果)
公立図書館所蔵自治体数 101
CiNiiの大学保有数 68
(おそらく冊数イコールで良いと思われる)
(参考)
公立図書館 3,289館 蔵書数 436,961千冊(図書館設置1,370/1,788自治体)
大学図書館数 1,418館 蔵書数 320,445千冊(779大学)
※日本の図書館統計(2016年)による。
価格設定から見て500〜1500部の間ぐらいの部数が刷られたのではないかと想像している。その場合、公立図書館所蔵比率は6.6〜20%程度を占める事になる。
このように「食糧も大丈夫也」は公立図書館の方が所蔵が多い結果となった。公立図書館は全国で約3200館存在しており母集団は大きい。本にもよるとは思うが大学が700程度しかなく、その中で学部・学科が異なる訳で分野単位で見ていくと大学図書館の存在感は必ずしも大きいとはいえないのではないか。
なお公貸権が出来た場合、大学図書館が例外にしてもらえるというのは楽観的すぎる。今でも電子ジャーナルの購読料で汲々としている大学図書館にもダメージを与える事は避けられないであろう。
I. 「食糧も大丈夫也」自治体別公立図書館所蔵状況
1.北海道・東北 6
北海道立青森県立
秋田県立
宮城県立
宮城県大崎市
福島県立
2.北関東 18
茨城県結城市茨城県日立市
茨城県水戸市
栃木県立
群馬県高崎市
埼玉県立
埼玉県川口市
埼玉県さいたま市
埼玉県上尾市
埼玉県朝霞市
埼玉県所沢市
千葉県船橋市
千葉県千葉市
千葉県柏市
千葉県松戸市
千葉県浦安市
千葉県成田市
千葉県八千代市
3.東京 19
東京都立東京都目黒区
東京都文京区
東京都江戸川区
東京都葛飾区
東京都北区
東京都港区
東京都墨田区
東京都新宿区
東京都荒川区
東京都杉並区
東京都江東区
東京都品川区
東京都練馬区
東京都立川市
東京都三鷹市
東京都西東京市
東京都府中市
東京都日野市
4.南関東・信越 10
神奈川県立神奈川県横浜市
神奈川県川崎市
神奈川県藤沢市
神奈川県逗子市
神奈川県横須賀市
新潟県立
長野県立
長野県松本市
山梨県立
5.北陸 5
富山県立石川県立
福井県立
福井県福井市
福井県敦賀市
6.東海 9
岐阜県立三重県立
三重県菰野町
静岡県立
静岡県静岡市
静岡県沼津市
愛知県立
愛知県名古屋市
愛知県豊橋市
7.関西 11
大阪府立大阪府大阪市
京都府立
滋賀県立
滋賀県彦根市
滋賀県東近江市
兵庫県立
兵庫県西脇市
兵庫県姫路市
奈良県生駒市
和歌山県立
8.中四国 9
岡山県立広島県立
広島県広島市
広島県福山市
山口県山口市
高知県立・高知市民
香川県立
香川県高松市
徳島県立
9.九州・沖縄 14
福岡県立福岡県福岡市
福岡県北九州市
福岡県大野城市
福岡県福津市
佐賀県立
佐賀県伊万里市
長崎県立
長崎県諫早市
大分県立
熊本県熊本市
宮崎県立
鹿児島県指宿市
沖縄県立
II. 「建物疎開と都市防空」自治体別公立図書館所蔵状況
川口朋子「建物疎開と都市防空」京都大学学術出版会について公立図書館と大学の所蔵館数について調査してみた所、全国で23館が所蔵していた。
CiNiiで大学図書館での保有数を調べた所 72館であった。
自治体の図書館の保有が少ないのは京都という特定の都市の建物疎開について調べられた作品だったためと考えられる。
1.北海道・東北 2
青森県立
宮城県
2.北関東 2
茨城県結城市
千葉県立
3.東京 2
東京都立
東京都渋谷区
4.南関東・信越 2
神奈川県立
神奈川県横浜市
5.北陸 1
富山県立
6.東海 2
愛知県
愛知県名古屋市
7.関西 6
大阪府立
京都府立
京都府京都市
京都府亀岡市
滋賀県立
兵庫県立
8.中四国 3
鳥取県立
岡山県立
香川県立
9.九州・沖縄 3
佐賀県立
佐賀県基山町
熊本県熊本市